スイスでは「プライベートバンカー」は5つの限られた銀行しか名乗れない
スイスの「プライベートバンカー」についてのお話です。
2019年を最後にスイスのプライベートバンカーの統廃合はひと段落したようです。しかし独占や寡占が進む世界の金融業界で、スイス銀行の最大の特徴であった「守秘性」が無くなった2021年現在では、現状の比較的小規模の基盤のままでの生き残りは必ずしも明るいとは言えないと考えられます。
スイス銀行法で規定されている「プライベート・バンカー」
スイスにおいては「Private Banker」という言葉は、厳格に使い分けられており、誰でも名乗れる名称ではありません。
スイスにおいては「プライベートバンカー」というの名称は単独または複数個人やその一族によって経営されている銀行のことを指しています。これはスイスの銀行法で明確に規定されており、ある一定の条件を満たしている銀行にだけ与えられた名誉ある「称号」である事はあまり知られていない事実なのです。
スイス・プライベート・バンカーズ協会とは?
スイスには「スイス・プライベート・バンカーズ協会」なる組織がが存在しています。 顧客の資産保全及び資産運用を業務の中心に据えるプライベートバンカーの義務及びその位置付けを明確に規定することを目的に1934年に設立されました。スイスにおいては同年、スイス銀行法が施行されておりプライベートバンカーが誇る長い伝統を法的にも擁護しようという当時の国家的意図を見て取ることができます。
同協会の本部はジュネーブにあり、老舗のプライベートバンカーを中心に現在は7行がメンバーとなっていましたが、2019年11月に1行が清算、もう1行が吸収となり残るは5行のみとなっています。
私見ですが、この伝統的な「プライベートバンカーズ」での継続は将来難しくなるのではないでしょうか。時代の流れには逆らえない感がありますので、現在保有されている顧客は早めにアメリカなどの口座に移す事を提案します。
今までとこれからのプライベート・バンカーズ協会の役割
2014年にスイス・プライベート・バンク協会が設立されるまで、その設立の趣旨は会員のバンカーが顧客に提供する高水準なサービス内容の維持にありました。
具体的には主な使命として次の6項目を挙げていましたが、現在はプライベートバンカーの立場を代表する協会として会員の意見などをまとめる組織となっており、その他の役割は、の大手を含む新旧プライベートバンカーズ11行によって新しく設立された「スイス・プライベート・バンク協会」が果たすこととなります。
- プライベートバンクとプライベート・バンキング業界を代表して国内外の金融当局と折衝
- 金融行政、関連法案について政府に提言
- 他の主要業界団体との積極的な意見交換の実施
- 世界の金融センターとしてのスイスの位置付けの維持に注力
- グローバル規模でプライベートバンカーのイメージ向上を推進
- 顧客にデメリットとなるような短期的な会員間の過当競争を抑制
「プライベートバンカー」と名乗れるのは協会のメンバーに限定される
日本ではかなり一般的かつ漠然と「プライベートバンカー」を名乗るケースが見受けられます。これは察するに「プライベート・バンキング業務」を行なう人の事を意味していると思われます。
しかし、これは少なくともスイスの国内では間違った意味となってしまい、法律に触れる事となります。スイスでは「プライベートバンカーの定義が厳格に決められており、それを名乗るにはスイス・プライベート・バンカーズ協会のメンバーでなければならないのです。
そしてプライベートバンカー協会に加盟するためには幾つかの厳しい条件を、クリアーしなければならないのです。