ヘッジ・ファンド業界の拡大に伴い米証券取引委員会が実質調査を開始

Posted on May 31, 2002

米国証券取引委員会(以後SEC)はヘッジ・ファンドおよび伝統的に富裕層が投資を行っている、比較的規則の緩やかな投資分野に対しての本格的な実態調査を開始した。SECの会長であるハーベイ・L・ピット氏は、詐欺行為の有無、ミューチュアル・ファンド同様にヘッジ・ファンド運用者の利益相反、そして個人投資家たちへの私募ファンドの直接的、非間接的なマーケティング方法、の三点について重点的に調査する、と発表した。

ピット氏は、ヘッジ・ファンドと競合するであろうミューチュアル・ファンド業界のロビー団体であるICI(米投資会社協会)の会議おいて「全ての口座において、私募ファンドは運用資産額、本数の両方において激的な増加をしている。」と、発言した。「しかし、これらのヘッジ・ファンドは報告義務が無い為、我々が現在保有している情報はいまだ大雑把である。調査の主目的は現状のヘッジ・ファンドに対する規制が、社会の利益にかなっているか明確にすることである。」とも言っている。

歴史的に見て、ヘッジ・ファンド及び他の関連私募株は初期最低投資額100万米ドルという大変富裕な投資家向けのものであった。これらの投資家は、洗練されており、また、大きな損失にも耐えられるとして、監視は特に厳しく無かった。

ヘッジ・ファンドの運用資産は昨年、普通の投資家の資金が流入した事により概算38%、5630億米ドルにまで成長した。証券会社は、時には初期投資5万米ドル程度の小額ヘッジ・ファンドを提供している。ヘッジ・ファンドへの関心が大きくなっている理由の一つは、ヘッジ・ファンドが現在の下落市場で収益をあげられる空売り戦略等を採用しているからと言えよう。

しかし最近の有名な詐欺事件として、マーク・ヤガラの事件がある。彼は、2つのヘッジ・ファンドをスタートし、顧客へ莫大な収益を約束して投資の勧誘をした。12月には法廷で顧客より集めた30億米ドルを横領した疑いに対し無罪を主張し、プレイボーイ誌のプレイメイトであるガールフレンドへのパーティ用プレゼントなどに使ったと弁明している。また、彼は欲に駆られた、とも発言している。

ピット氏がより厳しい規制の可能性を促す発言をした一方で、SEC広報担当官は「我々の調査が具体的に何か特別な目的を持っている訳ではない。」とも言っている。

「我々は、規則を強める為に調査しているのではなく、出来る限りの情報を集めようとしているだけだ。」とのSEC広報担当官であるクリスティー・ハランは言う。

ヘッジ・ファンドの顧問会社ヘネシーグループ社の会長、チャールズ・グランダンテ氏は断言する。「ピット氏(SEC)による調査は、巨大なヘッジ・ファンド、ロング・ターム・キャピタル・マネージメントの劇的な崩壊の後に行われた調査と同様に、広範囲に渡る新しい規制は必要ない、との結論に達するであろう。」「SECがヘッジ・ファンドに対して理解を深めるのは良い事だ。そしてLTCMの崩壊時に調査を行った議会が、大きなリスクを取っているヘッジ・ファンドはごく少数でしかない、と結論づけたのと同様の結果に達するのは間違いない。」

SECは、大きな会社の年金を運用しているミューチュアル・ファンド運用者が、会社の役員などからの経営提案に対しての委任投票で投資家との利益相反に直面する可能性がある、といった様な投資家権利擁護団体の批判に注意を払っている、ピット氏は言っている。この権利擁護団体は、ある提案が必ずしも投資家の利益にならないと考える際も、ファンド運用者がその提案に反対する傾向は低い、と主張しているのである。

SECの準主任顧問で、投資家権利擁護団体の設立者である「ファンド・デモクラシー」創始者であるマーサー・ブラード氏によれば、「ピット氏はスピーチの中では何も目新しいことは発言してはいない。SECのミューチュアル・ファンド部門の誰かが原稿を渡し、彼はただそれを読み上げただけ。」とのことである。

米国の株式市場の見通しが不透明な事から、市場が下落しても収益をあげられる「ヘッジ・ファンド」に注目が集まっている。と同時に、米国ではその普及に向けて一層の環境整備が進む事になる可能性が高い。■



<<ニュースの見出しに戻る

Top Page

Copyright© 2001, J. K. Wilton & Company.
For further information contact webmaster@jkwilton.com